量子計算は、量子状態の重ね合わせを利用することで、従来の古典計算に比べて計算効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
これが実現すれば、「富岳」のような世界最高水準のスーパーコンピュータを用いても計算困難な、基礎科学や社会応用における長年の課題解決につながります。
RIKEN Quantumは、物理学・化学・生命科学・人文学を縦糸に、量子計算アルゴリズムと量子シミュレータの開発を横糸に、量子コンピュータ実機や量子シミュレータを活用して学際研究を推進します。
異なる分野の研究者が分野横断的に糾合し、量子計算科学を統合的に推進するRIKEN Quantumは国際的にも独自性のあるプラットフォームです。
物理学分野
物理学分野では、これまでに蓄積された量子計算のアルゴリズムを駆使して素粒子物理学、原子核物理学、宇宙物理学、物性物理学における諸問題の解明に取り組みます。
特に量子多体系の基底状態、励起状態、時間発展、および熱力学の問題について、古典計算で到達できない領域にどのように迫れるかを明らかにするとともに、古典計算ではえられない新しい知見の獲得を目指します。
化学分野
化学分野では、量子コンピュータを化学分野で本格利用するため基盤技術を開発します。
特に量子・古典ハイブリッド計算に基づいた電子相関埋め込み法の開発、異粒子相関を考慮した正確な第一原理多体計算法を開発することで、原子核分野と量子化学分野にまたがる学際的な研究領域での量子コンピュータの利用可能性を拡大します。
さらに、タンパク質構造予測における量子コンピューティングの可能性を追求し、物理学と生命科学の橋渡しを行います。
生命科学分野
生命科学分野では、脳型量子計算技術の開発や、大規模医療データを量子AIにより高速解析する技術の開発などの先駆的研究を追求します。
また新しい量子測定技術と脳型量子計算技術を組み合わせた次世代の医療AIシステムの構築も念頭に置きます。
これらは、理研の強みを統合し生命科学分野に革新をもたらす可能性があります。
人文学分野
人文学分野では、人間の認知過程の順序効果などにみられる非可換性を手掛かりとして、量子論との類似性をもとに、文学表現における意味の曖昧性の重畳による美意識構造を定式化し量子コンピュータによるシミュレーションによりその構成原理を検証します。
また、様々な人文社会科学的現象が創発する量子論的メカニズムを論理化するとともに、量子コンピュータを用いて実験的に検証します。
計算科学分野
計算科学分野では、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した量子計算アルゴリズムのシミュレーションおよびQPUとのハイブリッドシステムの研究を進めます。
RIKENQuantum の各チームで研究・開発が進められる各分野の量子アルゴリズムの検証と評価を通して、必要とされるシステムと最適なユーザー環境の構築に取り組みます。
情報科学分野
情報科学分野では、量子多体系シミュレーション、量子-古典データ変換、量子機械学習アルゴリズム等の開発に取り組み、これらの物理学、化学、生物学における真に意義のある問題への最も有効な応用を見出すためのチーム間連携を実施します。
開発した量子アルゴリズムは、富岳を用いた量子計算シミュレーションや、量子コンピュータ実機によりその有効性を検証します。